額田の姫王物語

額田姫王

私の町、愛知県岡崎市額田地区の町つくりのシンボルキャラクターとして親しまれています。

今から1300年前の中大兄皇子と大海人皇子という古代史を代表とする二人の英雄に愛された万葉集初期の女流歌人。

彼女の名前は、万葉集では「額田王」。正史「日本書紀」には「額田姫王」と記されています。

額田地区では女性として理解でき、とてもやさしい雰囲気を漂わせる「額田姫王」を使っています。

・額田王(額田姫王)はその出自・経歴・成没年など詳らかでない。それは、額田王について伝える資料がごく限られているということによる。

・万葉集の12首の作品と「日本書紀」天武天皇2年2月の条に

という一文以外に伝えるものはない。ただ、大和国薬師寺縁起に伝える「額田部姫王」については記載の内容からして額田王と思われる。従って呼称については、
額田王(ぬかたのおおきみ)---万葉集
額田姫王(ぬかたのおおきみ)---日本書紀
額田部姫王(ぬかたべのおおきみ)---大和国薬師寺縁起

・額田王は、多くの学者の追及にもかかわらず、未だ実態の解明できない部分を残した謎の女性である。
文学にはなにがしかその作者の個性や、時代や社会を、すなわち歴史性をその作品に刻みつけずに存在するわけにはいかない。
従って、額田王の作品にもそれは刻まれて、額田王と額田王の作品を考える手がかりとなっていることも確かである。

額田町とのかかわり

約1800年前、三河郡史には、成務天皇〔第13代)の時代に額田部の一族が天皇の名代として全国へ遣わされ、額田部湯坐連(ぬかたべのゆむらじ)の子 額田部柱津連(ぬかたべのはしらずのむらじ)が、この地の郡造(こおりのみやっこ)として就任している。

額田部湯坐連・・・現在の奈良県大和郡山市額田に本拠地をもっていた皇子養育のためにおかれた湯坐連につながる皇族部民。額田姫王の祖先、もしくはこの一族が皇后を輩出したりまた額田姫王を養育したと伝えられる。

約1500年前、天下の奇祭で知られる夏山八幡宮(愛知県額田郡額田町大字夏山)に「額田部湯坐連の末裔である額田部貞晴が武烈天皇(第25代)時代に夏山卿柿平を開きこの地に住んだ。」とあります。

これらの額田姫王に関連する人々の縁が「額田」という地名に入っているということに注目したいと思います。

額田町の町つくりを行っていく上で、歴史性やこの土地の文化を深く知りイメージを重ねていくには、他の歴史上の人物よりも「額田姫王」が一番ふさわしいという結論に達しました。

額田王の歌 十三首

秋の野の み草刈り葺き 宿れりし 宇治の宮処(みやこ)の 仮廬(かりいほ)し思うほゆ
巻一(七)
大意‥‥‥秋の野のかやを刈り、屋根に葺いて旅宿りした 宇治の宮どころの仮の廬のことが思い出される。
熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
巻一(八)
大意‥‥‥熟田津で、船出をしようと月の出るのを待っていると、月も出、潮の具合もよくなった。さあ、今こそ漕ぎ出そう。
莫囂円隣之大相七兄爪謁気 我(わ)が背子(せこ)が い立たせりけむ 厳橿(いつかし)が本(もと)
巻一(九)
大意‥‥‥我が君がお立ちになったであろう、その聖なる橿の木の根元よ。
冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来(き)鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木(こ)の葉を見ては 黄葉(もみち)をば 取りてそしのふ 青きをば 置きてそ歎く そこし恨めし 秋山われは
巻一(十六)
大意‥‥‥春がやってくると、今まで鳴かずにいた鳥も来て鳴く。それに咲かずにいた花も咲いている。 が、山が茂っているので、分け入って取りもしない。草が深いので、手に取って見もしない。秋の山の木の葉を見ては、色ずいた葉を手に取って賞美する。青い葉をばそのままに置いて嘆く。その点が残念です。秋山です。わたしは。
味酒(うまさけ) 三輪(みわ)の山 あをによし 奈良の山の 山際(ま)に い隠(かく)るまで 道の隈(くま) い積(つ)もるまでに つばらにも 見つつ行かむを しばしばも 見放けむ山を 情(こころ)なく 雲の 隠さふべしや

巻一(十七)
大意‥‥‥三輪の山よ。奈良の山の山の間に隠れるまで、幾曲がりも曲がって遠ざかるまで、しみじみと見ながらいこうものを、何度も見たいと思っている山だのに、無常にも雲が隠したりしてよいものか。
三輪山を しかも隠すか 雲だにも 心あらむも 隠さふべしや
巻一(十八)
大意‥‥‥三輪山を何でそんなにも隠すのか。せめて雲だけでも思いやりがあってほしいものだ。隠したりしてよいものか。
あかねさす 紫野(むらさきの)行き 標野(しめの)行き 野守(のも)りは 見ずや 君が袖振る
巻一(二十)
大意‥‥‥まあ紫草お栽培されている標野を行きながらそんなことをなさって、野守が見るではありませんか。あなたはそんなに袖をおふりになったりして。
紫草(むらさき)の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻故(ゆえ)に 我れ恋めやも
巻一(二十一)
大意‥‥‥紫のように美しいあなたが好きでなかったら、人妻と知りながら、私はどうしてあなたに心ひかれたりしようか。
いにしへに 恋ぬる鳥かも 弓絃葉(ゆずるは)の 御井(みゐ)の上より 鳴き渡り行く
巻二(百十一)
大意‥‥‥古を恋慕う鳥なのでありましょうか。弓絃葉の御井の上を鳴きながら飛んで行きます。
いにしへに 恋ふらむ鳥は ほととぎす けだしや鳴きし 我が恋ふるごと
巻一(百十二)
大意‥‥‥古を恋慕う鳥はほととぎすなのですね。その鳥はおそらく鳴いていたことでしょう。私が遠い昔を恋慕っているように。
み吉野の 玉松が枝(え)は ひしきかも 君が御言(みこと)を持ちて通(かよ)はく
巻二(百十三)
大意‥‥‥み吉野の 玉松はなんとまあ美しいことでしょう。あなたのお言葉をもって通って来るとは。
かからむと かねて知りせば 大御船(おおみふね) 泊(は)てし泊(とま)りに 標結(しめや)はましを
巻二(百五十一)
大意‥‥‥こうなるであろうとあらかじめ知っていたなら、大君の御船が泊てた港に標縄を張りめぐらして、悪霊が入らないようにするのだったのに。
君待つと 我が恋ひをれば 我がやどの 簾動かし 秋の風吹く
巻四(四百八十八)
大意‥‥‥あの方のおいでを待って慕わしく思っていると、家の戸口のすだれをさやさやと動かして秋の風が吹く。

巻八(千六百六)488の重出

以上 計13首(長歌3首・短歌10首)

未成年者の飲酒は法律で禁止されています。20歳未満の方にはお酒は販売いたしません。

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